「ITは詳しいんでしょ」「ツール入れたら楽になるんじゃない?」
そんな一言から、業務用システムの検討を任されることがあります。小さな会社では、よくある話です。
そこから勤怠管理や名刺管理、CRMなどの業務用システムを検討していくと、たどり着くのが比較表です。
機能や料金が一覧で示されており、一見すると判断しやすそうに見えます。
製品ページには機能が整理され、見栄えのよい画面とともに、成功を語る導入事例が並びます。 それを見た上司が「これは楽になりそうだ」と前向きになるのも、無理はありません。
しかし、導入後の現場は必ずしもそうはいきません。
・設定に思った以上の時間がかかる
・誰が運用するのか決まらない
・そもそも、現場で使われない
こうした状況は決して珍しくありませんが、比較表からはほとんど見えてきません。
小さな会社の中には、明確な課題を言語化したうえでSaaS(月額で利用する業務システム)を探しているわけではなく、
「ツールを使えば何か便利になるらしい」
くらいの感覚から検討を始めるところも少なくありません。
その状態で比較表を見ると、機能の多さや見た目の分かりやすさに引きずられ、判断を誤ることがあります。
では、小さな会社が失敗を避けるためには、どこに注意しておけばよいのでしょうか。
この記事では、小さな会社がSaaSを選ぶ際、比較表だけで判断してはいけない理由を、現場の視点から整理します。
比較表は「導入前」しか見ていない― 使い始めてから何が起きるかは書かれていない
システムの比較表は、あくまで「選ぶ前」の判断材料として作られています。機能の有無や料金、対応デバイスなどが整理されており、導入を検討する段階では便利に見えます。
一方で、実際に使い始めてから何が起きるのかについては、ほとんど触れられていません。
たとえば、比較表には「〇〇ができる」「△△に対応」といった項目が並びます。しかし、それがどの程度の知識や設定を前提にしているのかまでは分かりません。
「なんでもできる」と書かれているシステムほど、
・初期設定の項目が多い
・用語が専門的
・設定しないと使えない機能が多い
といったケースは珍しくありません。
それでも比較表だけを見ていると、
・機能が多い=便利そう
・できることが多い=将来も安心
といった印象を持ちがちです。
実際、比較表や製品ページを見た上司から、「これ、いいじゃないか。何でもできるって書いてある」と言われた経験がある人もいるのではないでしょうか。
ただ、その「何でもできる」は、何もしなくてもできるという意味ではありません。
設定し、理解し、運用できる人がいて、初めて成り立つものです。
比較表は、その前提条件をほとんど示しません。
導入後に必要となる作業や負担は、表の外に置かれているのです。

比較表は「誰が運用するか」を前提にしていない―― 小さな会社ほど、ここで詰まる
比較表には、機能や価格、サポート体制などが並びます。しかし、「誰がそのシステムを運用するのか」という点は、ほとんど書かれていません。
実際の企業現場でも、導入時にこれが抜け落ち、導入後に慌てて決める状況を目にしてきました。
大企業であれば、情報システム部門や専任担当者がいるので多少の作業は吸収できます。
一方で、小さな会社では事情が違います。
- ITに少し詳しいという理由だけで任される
- 本来の業務と兼務している
- そもそも正式な担当が決まっていない
といったケースは珍しくありません。
比較表を見ると、「操作が簡単」「すぐ使える」「サポート充実」といった言葉が並びます。それを見ると、「誰でも使えるなら問題ないだろう」と判断されがちです。
しかし実際には、
- 初期設定を誰がやるのか
- 社内ルールをどう反映するのか
- トラブルが起きたとき、誰が判断するのか
といった作業が必ず発生します。
比較表は、こうした社内の前提条件までは扱いません。
「使えるかどうか」ではなく、「使い続けられる体制を作れるか」という問題は、表の外にあるのです。

比較表は「失敗したとき」を教えてくれない
比較表や製品ページには、「何ができるか」「どれだけ便利か」といった情報は多く載っています。一方で、「うまくいかなかったとき、どうなるのか」については、ほとんど触れられていません。
たとえば、導入後に次のような状況が起きることがあります。
- 思ったほど現場で使われない
- 一部の機能しか使われず、形骸化する
- 運用が回らず、結局元のやり方に戻る
こうしたケースは決して珍しくありませんが、比較表からは想像しにくいものです。
比較表には、「解約のしやすさ」や「やめるときの負担」は載っていません。
- データの移行はどうなるのか
- 途中で運用を諦めた場合、社内にどんな“後始末”が残るのか
そうした情報は、表の外にあります。
一度入れたシステムから撤退するには、導入時と同じくらいのエネルギーが必要になることもあります。
現場に明確な実害が出ない場合、効果を発揮していなくても放置されがちです。
その結果、使われないシステムを管理する担当者だけが、時間を削られ続けることになります。
比較表は、成功した場合の姿を並べることはあっても、失敗した場合に「誰が困るのか」「何が残るのか」までは示しません。
小さな会社では、一度の失敗がそのまま業務負担として残ります。「とりあえず入れてみる」という判断が、後からじわじわ効いてくることもあります。
比較表を見て判断するときは、「うまくいったらどうなるか」だけでなく、「うまくいかなかったら、誰が何を引き受けるのか」まで想像しておく必要があるのです。

まとめー小さな会社はどう判断すればいいのか
比較表が役に立たないからといって、勘や雰囲気で決めるしかないわけではありません。小さな会社がSaaSを選ぶときは、比較表の代わりに、次の点を意識して見る必要があります。
①「誰が使うか」ではなく、「誰が面倒を見るか」を決めておく
導入時に見落とされがちなのが、運用の担い手です。「誰でも使えるか」よりも、「誰が設定し、トラブル時に判断するのか」を先に決めておく必要があります。
特に小さな会社では、
- 本業と兼務している
- ITに少し詳しいという理由で任される
- 正式な役割として定義されていない
といった状況が珍しくありません。
その状態で多機能なシステムを入れると、負担はすべて特定の人に集まります。判断の前に、「この運用を1年続けられるか」を考えることが重要です。
②「全部できるか」ではなく、「最低限、何ができれば困らないか」を決める
比較表を見ると、どうしても機能の多さに目が行きます。しかし実際の業務で使うのは、その一部だけというケースがほとんどです。
まずは、
- 今いちばん手間がかかっている作業は何か
- それが少し楽になるだけで意味があるか
といった視点で、最低限の要件を整理します。
「できることが多い」よりも、「余計なことをしなくて済む」ほうが、結果的に続きやすいこともあります。
③「うまくいかなかった場合」を想定しておく
導入前の段階で、「失敗したらどうするか」を考えておくのは気が重いかもしれません。
しかし、小さな会社ほどこの視点が重要です。
- 使われなかったら、いつ撤退するか
- データはどう扱うか
- 誰が「やめる判断」をするのか
これらを決めておくだけで、無理な延命や担当者へのしわ寄せを防げます。
比較表は、あくまで入口の情報です。それだけで判断しようとすると、現場の前提や負担が抜け落ちます。
小さな会社のSaaS選びでは、「何ができるか」よりも、「誰が、どこまで引き受けられるか」を基準に考える。それだけでも、失敗の確率は大きく下げられます。
ツールによっては、「ここさえ気を付ければうまくいく」「この順番で機能を使えば失敗しない」というポイントも存在します。
このメディアでは、編集部が実際に触ってみて「小さな会社で本当に回るかどうか」という視点だけでSaaSを整理していきます。

